【書評】「お金2.0」から読み解く価値主義経済における生存戦略
お金2.0は名著である。
これから起こる経済の移り変わりを的確に言語化してくれている名著といってほぼ間違いないだろう。
さて風の噂によると、読書の利回りは25%程度あるらしい。
ただこれはあくまでも読んだ内容を行動に活かせば、の話である。
「おもしろい!」や「勉強になった!」というただの感想は、自らの生活を1ミリも好転させない。
結局のところ、得られた示唆をもとに今日、いや今この瞬間からどう行動するかで読書効果は利回りは決まる。
というわけで、「お金2.0」をテーマに僕らが未来に向けてどう行動すればいいのか考えてみたい。
資本主義から価値主義へ
お金2.0を一行で要約すると「経済のあり方が資本主義から価値主義へ変わる」である。
これは従来のお金というツールを使って価値の測定・保存・交換してきたしくみが、お金以外のツール、すなわちテクノロジーによって測定・保存・交換するしくみにシフトしていくことを意味する。
簡単にいえば、今まで「お金」を軸としてきた経済が「価値」が軸とするように変わっていくのだ。
著者であるメタップスの佐藤氏いわく、「価値」にはおおよそ3つに分類できるという。
世の中で使われている価値はという言葉は3つに分かれます。それは①有用性としての価値、②内面的な価値、③社会的な価値、の3つです。
ひたらくいえば、
①有用性としての価値→役に立つか?使用したときの価値
②内面的な価値→ 愛情や共感、好意などポジティブな効果をもたらす感情的価値
③社会的な価値→慈善活動やNPOなど社会全体の持続性と高める活動など社会全体としての意義的価値
といったところだろうか。
さらに佐藤氏は、資本主義から価値主義へシフトしていくにあたって、②内面的な価値や③社会的な価値は可視化され、相対的にこれらの価値は高まっていくと指摘している。
これまで資本主義は現実世界で役に立つかという観点の①の有用性のみを扱ってきました。そうなると②内面的な価値などは有用性の観点からは全くの無価値になります。③共同体全体に貢献するような社会的価値は、個人の利益の最大化が全体の利益に繋がると考える資本主義からすれば、ただの「お人好し」か「コスト」に過ぎません。(中略)
価値主義では新たなテクノロジーの誕生によって、内面的な価値や社会的な価値をも可視化して、それらも経済として成り立たせることで、資本主義の欠点を保管することができるようになっています。
個人に資産を蓄積する
それで結局僕らはこれから訪れる価値主義経済へ向けてどう行動すればいいのだろうか。
それは「個人に資産を蓄積する」ということである。
健常の経済の中で、個人と企業の大きな違いは「資産」です。個人が「収入」を得る手段は増えましたが、個人が「資産」を得る手段がないかぎりは、個人は経済の主役にはなれないと思います。
(中略)
個人が企業と同じように専門性や影響力や信用力をもとに生きていくためには、毎日の「収入」を稼ぎながらも、日々の活動から「資産」を築き上げていくことが不可欠です。会社にとっての株式と同じように、個人にとっての「時間」を実質的な資産として機能させることができれば、個人も会社と同じように自分の価値にレバレッジをかけて経済活動を展開することができるようになります。
ひとむかし前までは「資産」といえば主に金融資産のことだった。
自分の価値にレバレッジを効かせるためには、お金を担保に借金してレバレッジを効かせるか、お金で労働力や機械を買ってレバレッジを効かせるしか術がなかった。
つまり、多くの人にとって、イニシャルコストを貯めることが「資産の蓄積」においてボトルネックとなっていたわけである。
しかしながら、今の時代は「まずは1000万円貯める」とかそんなことしなくても、時間を投資してコンテンツやSNSなんかでインターネット上に「資産」を蓄積できる。
ツールやプログラミングを使えば、人を雇わずして作業の生産性をあげることもできる。
要するに、お金だけではなく、自らのスキル、コンテンツ、SNSのフォロワーなど資産性のあるもの全てを「資産」として蓄積すればいいのだ。
しかも幸福の条件となる3大資産①人的資本、②社会資本、③金融資産のうち、①人的資本と②社会資本についてはテクノロジーとの親和性が高い。
①人的資本でいえばGoogleやAmazonなどを使えばあらゆる知識にアクセスできるし、②社会資本でいえばTwitterなどのSNSを活用すればリアルな世界だけでは実現できなかった緩い繋がりを多くもてる。
「法人同士の繋がりもあるじゃないか」と思うかもしれないが、あくまでも個人に資産として蓄積されることがポイントなのである。
人間の幸福を決める3つの資本①人的資本、②社会資本、③金融資産のうち、ITレバレッジを効かせられるのは基本的に①と②。①は労働を手助け・代替する演算機能的位、②はゆるい繋がりを広く保つ関係維持機能的な位置づけ。ちなみに②は中央集権より分散型ネットワークの方に分がある。人間だもの。
— オンク (@it_warrior_onc) 2017年10月11日
これはインターネット上の資産にもあてはまる。
— オンク (@it_warrior_onc) 2017年12月31日
SNSアカの価値=汎用×信用
汎用=フォロワー数×文脈
文脈=コンテンツによるアカ同士の繋がり×コンテンツが引き継ぐ物語
信用=Σ価値
価値=(専門性+確実性+親和性)/ 利己心 pic.twitter.com/IhKRbrRO6E
資本主義と価値主義のポートフォリオを組む
ここで注意したいのが全てが価値主義になるわけではなく、あくまでも資本主義と価値主義が併存するという点である。
価値主義にシフトすれば今まで資本主義で負け組だった人たちが皆人生バラ色になるとかではなく、自分の得意な経済を選べるという話だ。
よって、もちろん価値主義でも負け組はでてくる。
ただ価値主義は②内面的な価値や③社会的な価値といった多様な価値により成り立つので、小さく試してダメそうたら別の価値で勝負してみる、というポートフォリオの組み方をすればいいのだ。
資本主義はいわゆる組織が主役の経済システムである。
そこでは組織が権力を持ち、権力によって得た富を平等という名のルールをもとに個人に分配する。
例えば、日系企業なんかは働いて価値を出さそうと出してなかろうと年功序列一定の給与が支払われる。
いってみれば一種のベーシックインカムである。
これを生活の土台とし、価値主義のなかで得意な経済圏を探し、徐々に資本主義から価値主義へシフトしていけばいい。
こう考えると、まずは「1000万貯める」とかそういう過去の成功モデルのおけるボトルネックはテクノロジーによってなくなりつつあるのではないだろうか。
まずは小さく価値主義経済で勝てそうな場所を探してみることから始めよう。
おしまい