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【書評】「知的戦闘力を高める 独学の技法」は複利で効いてくる

「独学」といえば「ある特定分野の知識や技術を習得するための勉強」というのが世間一般の認識だろう。

例えば、ビットコイン買ったときまとめて十冊くらい仮想通貨関連の本を買って読み漁るアレである。

しかし、山口氏の新刊『知的戦闘力を高める 独学の技法』によれば、独学とは広義の意味で「知的戦闘力を高めることがその目的であるという。

 

「独学」の目的である知的戦闘力とはなにか 

ではこの「知的戦闘力」とはなにか。

端的にいえば洞察力創造性である。

洞察力とはつまり、「目に見えない現象の背後で何が起きているのか?」「この後、どのようなことが起こりうるのか?」という二つの問いに対して答えを出す力のことです。

洞察力については特に問題ないだろう。

独学によって、ある分野の構造やメカニズムについて知っていれば、次になにが起こるか予測でき、それが直接的に成果に繋がる。

これは誰もが独学するうえで気づいていることだろう。

 

差がつくのは創造性の方である。

創造性とは「なにかをつなげること」なんだ。クリエイティブな人に対して、どうやって創造したのかを尋ねたら、彼らはちょっとバツがわるいんじゃないかな。なぜなら、実際になにかを作り出すなんてことはしていないから。彼らはただ自分の経験から得られた知見をつなぎ合わせて、それを新しいモノゴトに統合させるんだ。

新たなアイデアはパクみ合わせることで生まれる。

どんな斬新なアイデアであったとしても、究極的にいえば新しい言語体系でも作り出さない限り、そのアイデアの個々の要素自体はオリジナルではない。

あくまでも組み合わせがオリジナルなのだ。

さらにここでポイントなのは、創造性にはレバレッジが効くということである。

すべてのアイデアは、異なる2つの要素の組み合わせによって生まれると仮定した場合、10個の知識を持っている人と100個の知識を持っている人では、組み合わせによって得られるアイデアの数はそれぞれ45個と4950個となります。つまり、知識の量が10倍になると、その知識の組み合わせによって生み出せるアイデアの数は100倍以上になります。

独学によってもたらされる利点は、特定分野の洞察力よりもむしろ創造性が高まることにあるのだ。

 

知的戦闘力を高める11ジャンル

ではこの知的戦闘力、特に創造性を高めるにはなにを学べばいいのか。

山口氏は「知的戦闘力を向上させる」のに有用な分野として以下の11ジャンルを紹介している。

① 歴史
② 経済学
③ 哲学
経営学
⑤ 心理学
⑥ 音楽
脳科学
⑧ 文学
⑨ 詩
⑩ 宗教
⑪ 自然科学

まあいわゆる「教養」というやつである。

しかし、個人的にはこれら11ジャンルを頑張って学ぶのではなく、心惹かれる分野を突き詰めようとすれば、自ずと心理学や経済学などリベラル・アーツと呼ばれる分野に自ずと辿り着くように感じる。

合コンでゴールしようと思えば経済学のゲーム理論、デートでホテルに誘いたければ心理学、彼女からみえる世界を少し変えてあげたければ宗教に辿り着く。

知的好奇心さえ維持できれば、知的戦闘力は自ずと高まっていくはずだ。

 

 

創造性はメタな思考がカギ

創造性、すなわち「なにかをつなげて新たなアイデアを生み出す」にはおそらくメタな思考が関係している。

簡単にいえば、そもそも系の一歩引いた見方ができる、ということだ。

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このメタな思考は、①自分を客観視する、②知らないことを知る、③その概念自体がなにかを問う、④上位の目的を問う、⑤抽象化する、あたりが具体的なやり方なのだが、これらの幅を広げるには教養という土台が必要になってくる。

この教養こそがおそらく先に上げた11ジャンルなのだろう。

 

「独学の技法」は忘却を前提としたシステム

ただ当然のことながらこんな11ジャンルの内容など、人間の脳にストックできるはずはないので、山口氏は忘却を前提したシステムとして「独学の技法」を構築すべきだと述べている。

むしろ「インプットされた内容の9割は短期間に忘却される」ことを前提にしながら、いかに文脈・状況に応じて適切に、忘れてしまった過去のインプットを引き出して活用できるかがカギなのです。

そのシステムを彼は4つのモジュールに分けて考えているのだが、実は僕のやってることとかなり似ていた。

独学は大きく、「①戦略」→「②インプット」→「③抽象化・構造化」→「④ストック」という流れによって形成されます。
①戦略
 どのようなテーマについて知的戦闘力を高めようとしているのか、その方向性を考えること
②インプット
 戦略の方向性に基づいて、本やその他の情報ソースから情報をインプットすること
③抽象化・構造化
 インプットした知識を抽象化したり、他のものと結びつけたりすることで、自分なりのユニークな示唆・洞察・気づきを生み出すこと
④ストック
 獲得した知識と、抽象化・構造化によって得られた示唆や洞察をセットとして保存し、必要に応じて引き出せるように整理しておくこと

①戦略は「個人が金と女から解放され自由になること」「いまある目の前の生活が少してもよくなること」「頭がよくなること」などをテーマとして設定しているし、②はここ数年にわたる本とメルマガの大人買い、③抽象化・構造化はTwitterでのつぶやきやブログでの備忘録、そして④ストックは週刊恋愛サロンでも紹介したが、Kindleキャプチャ、紙の書籍書き込み、Evernoteへのメモである。

 

確かにここ数年でなんとなく洞察力は高まった感はある。

ふとした瞬間に「あ、これってこの前のあの本のあの話とまったく同じ構造だ」と解がみえたときの気持ち良さはたまらないものがある。

創造性の方はまだまだだが、おそらくこれから高まると勝手に思っている(笑)。

異なるものをざっと並べて観るのがポイントらしい。

 

「独学の技法」は巷によくある「短期でちょっと生産性が上がる」とかそういうライフハック的なものではないが、年単位で実行すればこれはかなり知的戦闘力が増す、再現性の高いメソッドなのではないだろうか。

 

 

おしまい

参考