恋愛工学は本当に効果があるのか〜非モテコミットの記憶と自分に起きた変化〜
「恋愛工学を知る前のオンクくんに出会いたかったな。昔からこんな感じなの?別に複数の子と関係もたずに非モテコミットしても、あたしオンクくんのことずっと大好きなのに」
ベッドの中で香織(仮名)が言った。
(香織はとある出来事をきっかけに僕の全てを知ってる。)
もちろん昔からこんなではない。
昔はちゃんと世間の一般常識のとおり、健全にひとりの彼女とお付き合いしていた。
あまり過去を振り返るのは好きでないが、香織のこの言葉をきっかけにいつの間にか昔の出来事を思い出していた。
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暗黒の大学院時代。2年遠距離で付き合ってもこうなる
大学院時代、僕には付き合って2年になる遠距離の彼女がいた。
彼女は怒ると少し怖いが愛嬌があって、ビーチバレーのあの選手に似ているとてもかわいらしい感じの子だった。
もともと地方の大学に通っていた僕はサッカーサークルに所属しており、そこのマネージャとして出会ったのが当時の彼女である。
学年は2つ下。端からみるとリア充だったのかもしれない。
そして、僕が東京の大学院に進学するのを機に遠距離恋愛になった。
遠距離であってもまあそれなりには楽しくやっていた。
逢うのはお金がないのでだいたい2~3か月に1回程度。
彼女が東京に上京してきて、何泊かして東京観光をしていた。
東京タワーやディズニーランドに行ったりもした。
理系の大学院というのは思っていたより多忙だった。
基本的には研究室に缶詰めにもかかわらず、就職活動という非常に重いタスクがのしかかってくる。
徹夜で就職活動の集団面接にのぞみ、面接中に寝てしまったこともあった。
そんななかでも彼女に逢うのは、毎回すごく楽しみにしていた。
研究の進捗が滞らないようにまとめてプログラムを組んだり、研究成果をあえて小出しにしたり、ティーチングアシスタント(授業の支援係りみたいなもの)のバイトをしたり、彼女と逢う時間とお金を学生なりになんとか捻出していた。
お金も時間もこれだけのコストをかけて毎回逢ってるわけだから、もちろん彼女が大学を卒業したら東京に引っ越してくる約束をしていた。
当然結婚を見据えてのことだ。
ある日の夜、いつものように彼女からSkypeがかかってきた。
そのとき僕はとある病気で入院していた。
当初は手術をすれば2週間程度で退院できる予定だったが、手術したもののよくならず、入院生活も1か月に差し掛かろうとしていたときだった。
病室ではでられないので面会スペースまで歩いていき、いつもどおりSkypeをかけ直す。
「あのさー」
いつもは「体調どう?」から会話が始まるがその日は違った。
「よく考えてんけど、うちやっぱ卒業しても東京には行かずに地元に残ることにするわ。親や友達もこっちにたくさんおるし。」
最初はなにを言っているかよく理解できなかった。
そして、数秒してから意味が頭の中に入ってきた。
いくらなんでも今言わなくてもいいじゃんと思った。
というかあまりにも唐突だった。
それまでも普通に連絡していたし、つい3日前までは治ったら早く逢いたいねという話もしていた。
「えっ、なんでこれまた急に?」
「やー、よく考えて決めてんてあたしも」
「えっ、よくわかんない。なんで?」
テラスハウスの記事でも書いたが、この理由を問い詰めたところでもはやなんの意味もない。
ただ、ゴリゴリの理系大学院生の自分にとっては、なにかしらの理由がなければ納得できなかったのだろう。
今思えば他に男ができたのは容易に推測できる。
Skypeを切り、病室に戻ると苛立ちが抑えきれず、彼女とお揃いでそろえていたセサミストリートのマグカップを床に叩きつけた。
粉々になったマグカップの破片には目もくれず、その日は眠りについた。
結局その後も彼女から納得できる回答は特にないまま、そのまま連絡がとれなくなった。
約2年間これほど仲良く時間をかけて付き合ってきたのに別れとは意外とあっけないものだなと感じた。
遠距離でやっと逢えたときのあのうれしい気持ちやバイバイするときのあの切ない気持ちはなんだったんだろう。
そして、それと同時に恋人とは、こういう大変なときこそお互いを支え合っていくものじゃないのかとも思った。
あたりまえだが、2年間"付き合った"としても別にこの先もずっと一緒にいれる保証がなにかあるわけではない。
"付き合う"というオフィシャル感あふれる概念によって、なにかしら堅い絆のようなものがあると思い込んでいたのかもしれない。
社会人になりたての新人時代。リソース費やしてもこうなる
オンクの病気も無事完治し、大学院で修士号を取得して大手と呼ばれる企業に就職した。
理系で研究や勉強で忙しかったこともあり、その反動からかはわからないが、毎週のように合コンにあけくれた。
会社の同期とよく合コンにいっていたのだが、仲のいい同期はみな理系院卒であるため、結果は散々だった。
あたりまえだ。
これまで女性とまともにコミュニケーションしたことがないのだから当然のことだ。
なかには、合コンで女の子にTCP/IPの説明をしだす同期もいたほどだった。
そんな下手くそな合コンをやっていても、数こなせば意外と彼女はできるものである。
同業他社でシステムエンジニアの彼女ができた。
少しぽっちゃりめだったが、あのアナウンサーのようなかわいらしい子だった。
あのとき(大学院時代)はお金も時間もなかったが、今ならかなりのリソースをつぎ込める。
あのとき(大学院時代)は学生だったし、リソース(お金も時間)が足りなかったんだ。
今回は絶対うまくいくはず。
無知とは怖いものだ。
研究であれほど事実と論理にもとづいて考えろと言われながらも、恋愛だけはなぜか特別だと考えてしまってる自分がいた。
そして、社会人1年目の全リソースをかけた非モテコミットが始まった。
早稲田や慶応出身のイケてる同期や先輩からお店の情報を教えてもらい、学生時代には絶対行かなかったようなおしゃれなレストランやバーに行った。
もちろん全ておごりだ。
旅行にも行った。
彼女のために鉄板焼きや露天風呂付きの部屋を予約した。
彼女の仕事も手伝った。
簡単な在庫振り分けプログラムをVBAでつくった。
彼女はそれを自分の手柄のように報告したところすごくほめられたらしい。
「コンプラ的に大丈夫かな?」という疑問が一瞬浮かんだが、彼女が喜んでくれてたことでそんな疑問はどうでもよくなった。
まるで自分のことのようにうれしかった。
これを読んでる方はもうおわかりだろう。
そう。非モテコミットによる破滅は恐ろしいほど簡単に訪れる。
付き合って3か月ほどたったころ、
ある日を境に彼女からのLINEの返信が返ってこなくなった。
そして、数日後、カフェで会おうといわれた。
「前から思ってたんだけど価値観あわないと思うんだよね。別れてほしいな」
このときはさすがに予想はついていた。
「えっ、でも急になんで?」
社会人1年目だけど一般的な会社に比べると給料はそこそこ高いし、前回の学生時代よりもはるかに大きなリソースを費やしてきたはずだ。
なぜだろう。 理系院卒キモヲタの発想は意外とこんなものだ。
「や、別に急ではなくて前から違うなーて思ってたの。オンクくんのおもしろいと思って言ってることは、あたしには全然おもしろく感じないんだよね」
付き合い始めはあれほど笑ってたのにキモいスイッチが入った途端こうなる。
「えっ、なんで?でも前は笑ってたじゃん。それに前に行った旅行もすごく楽しんでくれてたじゃん」
「や、気を使ってたの。旅行は楽しかったしご飯もおいしかったけど、それとオンクくんといると楽しいかてのは別の話でしょ?あとそうやってなんでってすぐ聞く癖、理屈ばっかこねてほんとキモいからやめた方がいいよ。」
いつの間にか涙が頬をつたっていた。
恋愛工学との出会い。モテるようになる
この出来事があってから会社を2日ほど休んだ。
非モテコミットしているときは、仕事や勉強よりも恋愛が最優先になる。
そして、もう二度とこんな想いはしたくないとも思った。
気がつくと、Amazonの買い物カゴは数十冊の恋愛本で、FireFoxのタブは「恋愛 ○○」クエリの検索結果で、それぞれ埋め尽くされていた。
そんななか恋愛工学という有料メルマガをみつけた。
たまにWebのコンテンツにお金を払うことに抵抗がある人がいるが、僕は学生時代からずっとWeb系の研究をしていたこともあり、まったくそんなことはなかった。
もし文系学生だったら素通りしてたかもしれない。
それに単品購入だと216円と、ナンパ関連の情報商材に比べると全然安いことも手伝って、試しに購入してみることにした。
はじめて買ったバックナンバーがこれだ。
週刊金融日記 第86号 非モテコミットの科学、円安で日経平均年初来高値、白金の和牛が美味しい焼肉、オープナー・ルーティーン、他|藤沢数希|note
なぜかというと、"非モテ"というキーワードが、今の自分になにかしらのヒントを与えてくれそうだったからだ。
案の定ぶっ刺さった。刺さりに刺さりまくった。
まさに自分の今の状況が進化生物学の観点から説明されていた。
はっきりいってこれは論文だ、そう思った。
経済学や進化生物学、ゲーム理論などの理論を恋愛というドメインに適用した、いってみれば、理論や技術ではなく適用分野が新しいというタイプの論文だ。
ちまたにあふれる「~するための5つの方法」というようなN○VERまとめなどの記事とはまったく程遠い。
そこから主要バックナンバーから順に読み漁り、いつの間にか全てのバックナンバーを購入していた。
それから恋愛工学をすぐに実践した。
常に複数案件をまわし、毎週のようないろんな女性と結ばれた。
もともとスペックが悪くなかったこともあり、意外と簡単にモテるようになった。
出会っていいなと思った子の7~8割くらいには好きになってもらえることができた。
気付くと、彼女ができるたびにフラれて落ち込むといった、昔のような悩みは一切なくなっていた。(事実フラれることもあるが以前のようには落ち込むことはなくなった。)
恋愛工学に出会ってからなにが変わったのか
もちろん当初の目標どおり、昔のようにフラれてつらい想いをしなくなった。
それにたくさんの女の子を抱けるようにもなった。
ある程度のお金をもつようになるとお金のことを気にしなくなるのと同様で、セックスに困らなくなるとセックスへの執着がなくなる。
しかし、こんなことははっきり言ってそこまで重要ではない。
今後の人生でもっと大事な変化があったので、最後にそれをまとめておきたい。
1)感情が変わった
感情に支配されることが減り、自分のやりたいことに集中できるようになったし、
どうすればもっとよくできるかという発想で物事をポジティブに捉えられるようにもなった。
これは恋愛でフラれたときだけではなく、クライアントや先輩にブチキレられたときも同様にだ。
おそらく目の前の物事を生理学や心理学のフレームをあてはめて解釈しようすることに注意が向くためだと思う。
it-warrior-onc-onclog.hatenablog.com
2)出来事を解釈するフレームが変わった
恋愛工学にはスタティスティカル・アービトラージやセックストリガーなどのキャッチ―で覚えやすいテクニックやルーティーンが有名だ。
しかし、これらは単に枝葉の部分に過ぎない。
恋愛工学はなにかというと、既存の経済学や進化生物学、心理学などの理論や考え方を恋愛という分野に適用した事例、である。
ということは、このへんの理論や考え方を知っておくと、世の中の物事をこのフレームで解釈できるようになる。
営業や就職活動などへ応用はとてもわかりやすい。
it-warrior-onc-onclog.hatenablog.com
しかし、まだまだ他の分野にも応用が期待できると思っている。
この出来事を進化生物学の視点でみると…
その出来事を経済学の視点でみると…
あの出来事を心理学の視点でみると…
と発想してみればいいのだ。
上司や先輩に比べ、圧倒的に知識も経験も劣る自分が付加価値をだすには、やはり違った枠組みでものごとをとらえなければならないと常々思う。
3)つきあう人たちが変わった
普通に生活してたら絶対出会わなかっただろう人たちに会って、いろんな価値観や考え方をインプットしたり、それらを反芻しアウトプットするようになった。
もし恋愛工学に出会ってなければ、(ナンパも含め)知らない人とこれほどまで話す機会はなかっただろうし、会社の同僚とグチりながらお酒を飲むことを繰り返していたかもしれない。
そして、このコミュニティの素晴らしいところは、お互いの違う価値観や考え方を受け入れる姿勢があるという点だ。
「仲がいい相手とはすべての意見が一致しないといけない」というムラ社会の前提はここにはない。
借り物の答えではなくて、自ら考えることができるからこそこれができるのだろいう。
会社に入ると「お前将来のロールモデルてないの?」と言われ続けるが、別に無理にマネしなくても、必要だと思ったところだけ取り入れて、何者でもない自分になればいいのではないだろうか。
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そんなことをざっくり、なんとなく思っていた。
「もちろん昔からこんなじゃないよ。でも別に後悔はしてないかな。てか恋愛工学知らなかったらおれら出会ってないからそもそも(笑)。世の中香織みたいな心の美しい子ばっかりになればいいのな」
こうしてその夜、二回戦目が始まった。
参考
スタンフォードのストレスを力に変える教科書は、ストレスにどう対処していくかについて書かれた本ですが、その中に「Restorative Narrative(回復の物語)」という大事な概念があります。ひとことでいうと、これは苦しみの中にどのような意味を見出し、乗り越えてきたかというストーリーのことです。ivoh(希望を与えるためのメディア配信サービス)の代表者マラリー・ジャン・テノールによると、人はこのestorative Narrative(回復の物語)を聞いたり読んだりすることで、希望や勇気、意欲がわき、レジリエンス(ストレス耐性のような力)が高まるそうです。つまり、これをきっかけに自分の人生をよりいいものにできるってことですね。 そう考えると、ケーゴさん(@Kgo_Number10)、さくらいさん(@sansaku_sakurai)のブログは、まさに一種のestorative Narrative(回復の物語)といえますよね。